関西の落語家の重鎮として知られる桂文枝さんが、最近のテレビ番組の低下を嘆いておられた。
特に強調されたことはお笑い番組やバラエティー番組で、芸人達の下品な言葉使いと内輪で盛り上がる「ごっこ」みたいな現実だった。昔の関西の漫才師には計算された芸があり、笑われるより笑わせるプロの芸術的な誇りもあったようだし、落語で重視される「間」についての彼らしい持論に共感を覚えるに至った。
言葉は芸人達だけでなく、アナウンサーの中にも問題が多く、特に気になるのが何度も触れた「思います」について決まっていることをどうして「思っています」と発言するのと強い抵抗感を抱いている。
歌番組で「ここで**さんに歌っていただきたいと思います」と紹介をした司会のアナウンサーに「あなたが思ってどうするの?」と伝えたいし、クイズ番組を進行する司会者が「では、次のクイズに行ってみたいと思います」とは羞恥のレベルと指摘したい。
入院していた病院での体験を再度書いておこう。毎朝病室に若い女性スタッフが来られ、元気な声で「おはようございます」と挨拶されるのだが、続いて言われる次の言葉に抵抗を感じ、3回目に来られた際についアドバイスをしてしまった。
「今からこのお部屋をお掃除させていただきたいと思います」と言うのだが、日課で決まっていることなら「お掃除に参りました」からスタートすればよいのではと伝えた。
「採血の方、よろしいでしょうか?」と言って来室された新人看護婦さんもおられた、彼女に「方って何? ここはマクドナルドみたい」と返すと、「そうですね」と笑われた。
その彼女が採血するのに3回も失敗され、「申し訳ございません。上司に報告し先輩に頼んできますと出て行ってしまった。しばらくするとベテラン看護師さんが来室、「私が担当します」と採血が行われたが、針を刺した瞬間し「力を抜いてください」と言われたので、「針が刺さった状態で患者は力を抜けないよ。もう終わりますからと言われたら自然に力が抜けるよ」と反論したら、「初めてご指摘を受けましたが、確かにそうですね。勉強になりました」と感謝された。
言葉一つで百八十度異なることもあるものだが、これは、否定語と肯定語の違いというテーマで指摘される問題で、閉店時間の前に来店したお客さんに「コーヒーは売り切れました」と言うのと「紅茶ならご用意出来ますが」と対応するのでは雲泥の差が生じる例でも考えたい。