出張の帰路に疲れて予定外に温泉地に立ち寄ったことも何度かあった。車での移動が多かったのでそれも楽しみの一つだったが、その地の近くで時刻表の終章部分にある温泉名や旅館名を確認しながらイメージを膨らませるのは言葉で表現出来ないような「ワクワク感」を覚えるものだ。
居眠り運転の危険性や濃い霧に包まれて危険と判断したケースもあったが、群馬県の「舌切り雀」伝説で知られる「磯部温泉」、長野県「別所温泉」「昼神温泉」などが印象に残っているが、九州からの帰路に立ち寄った山口県「湯田温泉」はお気に入りで、何度か訪れたことがある。
福島県で旅館の火災のニュースがあったが、利用する場合には非常口や避難ルートを確認しておくことは重要で、煙が充満していても脱出出来る備えを考えておきたいものである。
昔、自宅やお寺での葬儀が主流だった時代、いつも最悪のことを想定する性格から、消火器を持参していたことが懐かしい思い出となっている。知人の消火器専門会社に電話を入れ、お勧めを十数本購入したことを憶えているが、冬場の暖房設備を使用することや、祭壇設備で電気を多く消費することにも備え、外に2本、中に1本準備していたのでお客様の目に留まり、それだけでも防火につながる効果が生まれたような気がしていた。
いざという時に消火器が機能しなかったら大変と、有効期限よりも随分前に交換して貰っていたが、幸いにもそれらを一回も使用することはなかったので手を合わせている。
ある大きなお寺で葬儀が行われている時、親族の方々の焼香が終わって代表者の焼香時間となり式場の外へ出たら、空が真っ暗な状態になり今にも夕立が降りそうで覚悟した。
式場の玄関に並ばれた喪主さんやご親戚の方々も心配の様子で空を見上げられている。どうか降らないでと祈った思いも空しく、すぐに大粒の雨が落ちて来てしまった。
テント設備に入れない参列者が100人ぐらいおられる。その人達に10名の接待担当スタッフが傘を持って手渡す行動を始めた。
夕立は五分ほどで止んでくれたが、300本用意してあった傘が見事に役立ってくれて安堵した。
火葬場へ向かう車の中、「空を見上げた時はやばいと思ったが、よくぞ傘を準備してくれていたものだ。あの瞬間によい葬儀社を選択したと思えたよ」と仰ってくださった喪主さん。サービスとはいざという時に備える発想も大切なのである。