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こんなことも  NO 3367

 遠い昔のことだが、遠方からご依頼があり私がスタッフと共に病院へお迎えに行き、日付が変わった頃にご自宅にご安置。そこからお寺様を迎えて枕経となり、それが終わってから葬儀の打合せとなった。

 故人は邦楽の世界で著名な方。ご自宅での葬儀を執り行われることになったが、弔辞が3名予定され、800名ぐらいの参列者が予想されるところ1時間半の式次第で進めることになった。

 時間に関してもお寺様のスケジュールと火葬場の確認も取れたので、後は地域の方々へのご通知をどうするかということだった。

 外は少し明るく鳴り始めた頃。こんなに早くご挨拶に参上してもということから町会長さんへのお知らせは午前8時になってからと決まったが、午前7時半頃、その町会長さんご自身がご当家にやって来られ、突然に「誰に断わって勝手に葬式の手配を進めているのだ!」と一方的にご立腹の態度で抗議をされ、それに対してご親戚の方が反論。「葬儀を誰に断わる必要があるのだ。あなたはどういう立場なのか」と険悪な雰囲気になってしまったので間に挟まれて困惑してしまった。

 ご親戚の立場はトラブルになっても後のことはないが、ご家族はこれからもここで生活をされるのだからそんな配慮も大切だと思いながら、出来るだけ場を和らげるようなイメージを重視しながら割って入ることにした。

「皆さんで午前8時になったら町会長さんにお知らせに参上することにしていましたが、何方様がご訃報をお知らせになったようで、ご挨拶という礼節を欠いた結果となり申し訳ございません」というと、さっきのご親戚の方はご立腹が治まらないご様子で、「葬儀屋さん、あなたが謝る筋合いは一切ない。おかしいのは怒鳴り込んで来たこの人物で失礼極まりないではないか。遺族がどんな葬儀を進めるか、どこの葬儀社に依頼するかも自由な筈で、この町は車はニッサン、テレビは東芝などと決まっているのか?」とエスカレートされたので困った状況に。

 そこまで言われた町会長さんも少し自分の行動が無茶だったことに気付かれたようで、自分の立場を理解して欲しいと態度を変更されたのでホッとした。

 これまでの体験から「当町会は**葬儀社」と暗黙の取り決めをしているケースも少なくなく、それが葬儀社と自治会の裏取引みたいな事実もあり、まだまだ低次元な村社会みたいな実態があるのが複雑な葬儀の世界だが、このケースでもそんな事情が絡んでいたことを後から知ることになった。

 葬儀の進め方やご遺族の思いなんて一切無視。自身の紹介料を優先させる行動に腹立たしい思いを抱いたこともいっぱいあったが、葬儀社を指定されている理不尽な現実に対して、上述のご親戚が反論されたお言葉は名言だったように思っている。