秋色濃くなりゆくこの頃、紅葉は葉の命の燃焼であるというフレーズをナレーションで使っていたこともあるが、「人の恋しさが募る秋」「過ぎ行きし年月を想い懐かしむ秋」という言葉も思い浮かんで来る。
夏の暑さが過ぎ、朝夕に涼しさを感じ始めてしばらくするといつしか「水」に冷たさが戻っている。それこそ「秋」の到来で、この季節が好きである。
この季節になると歌われる歌がある。「今は、もう秋。誰もいない海」という歌詞の歌である。「トワ・エ・モワ」の名曲として歌い続けられている曲だが、ジャンルとしてはフォークソングと言われている。
越路吹雪さんも歌っておられたことが印象に残っているが、この曲の歌詞についてある音楽評論家の解説が今でも心に刻まれている。それは「泣きたい」「死にたい」というような歌詞が多い中、「死にはしないわ」という歌詞は珍しく、特筆するべきというもので、何か辛いことを励ます応援歌に聞こえるかもしれない。
この曲が登場した時はシャンソン歌手が歌っていたが、1970年に「トワ・エ・モワ」が歌って大ヒットしたのだが、発表と同じ日に越路吹雪さんのシングル盤も発売されていたことを知る人は少ないだろう。
その背景には作曲を担当された「内藤法美氏」が越路さんのご主人だったということもあるが、歌詞として特徴的なのは次の部分である。
「海に約束したから つらくてもつらくても 死にはしないわ」
「砂と約束したから 寂しくても寂しくても 死にはしないわ」
「空と約束したから ひとりでもひとりでも 死にはしないわ」
青春時代にギターを爪弾いていた時代があり、この曲が好きで引き語りのレパートリーにしていたこともあって懐かしいが、「トワ・エ・モワ」の2人が登場された時は言葉で表現出来ないような新鮮な感じを抱き、前述の評論家の言葉からずっと人生に於ける愛する曲の一つとなっている。
大ヒットしてからもう45年目を迎え、この間に「秋」を45回迎えたことになる。人生の黄昏を感じ始めたこの頃だが、晩秋という言葉が何かしら心の扉をノックするようなこの頃である。